結核がつくる物語
感染と読者の近代
著:北川 扶生子
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内容紹介
近代最大の感染症、結核は「治療法のない死病」として恐れられてきた。思想統制から戦争に向かう厳しい時代のなかで、患者たちは何を思い、どんな言葉を残したのか。彼らの言葉から何を学ぶことができるのか。結核が国や文化や文学に与えた影響とともに、患者たち個人の療養環境を捉え直し、患者の営みの意味を考える。
目次
序 章 患者って誰のこと?
1 近代日本最大の感染症・結核
2 病気を書く、伝える、笑う
第1章 病気になるのは誰のせい?——国家と結核
1 環境要因説から体質遺伝説へ——優生学の台頭
2 自然淘汰としての結核
3 戦争とからだ——国家による身体の管理
第2章 空気が変わるとき——文化と結核
1 都市/地方イメージの変化
2 〈美人の基準〉の変化と健康のステイタス化
3 結核予防国民運動
第3章 患者は特別なひと?——文学と結核
1 愛と死をみつめて——闘病純愛もの
2 志なかばにして——立志青年の英雄的悲劇
3 貧困と﹁過激思想」——共産主義・無政府主義・テロ
4 ふだんは見えないものが——鋭敏な感受性のしるし
第4章 病むわたしの日常を綴る——書くことと結核
1 見ることの凄味——正岡子規の絶筆
2 日常の発見、地方の発見——写生文・日記文運動と投稿文化
3 座と笑い——俳諧精神の水脈
第5章 確かな情報はどこに?——患者とメディア
1 あふれるデマと建前
2 結核患者向け雑誌『療養生活』と自然療法
3 療養グッズ通販と患者の格差
第6章 「病いはわたしを鍛える」——患者と修養
1 サナトリウムと療養小屋
2 自然療法と信仰
3 修養主義の系譜
第7章 発信する、つながる、笑う——患者交流欄のしくみとはたらき
1 〈患者〉からの解放
2 苦難を交換する
3 笑いがつくりだすもの——露出とパフォーマンス
終 章 わたしたちのからだは誰のものか
あとがき
参考文献
結核関連年表
索 引