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シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年

著:川上 泰徳

紙版

内容紹介

1948年のイスラエル「建国」に伴い70万人のパレスチナ人が故郷を追われてから70年。0.1km?に満たない敷地内で3000人が殺された1982年の「サブラ・シャティーラの虐殺」で知られるレバノンのシャティーラキャンプに長年通い続ける著者が多くの証言を通して紡ぎ出す、難民たちの苦難の歴史。

目次

関連略年表
本書に登場する人々

はじめに

第1章 ナクバ〈大厄災〉の記憶
 現代の「楽園追放」の物語/逃げ出したアラブ人部隊/ユダヤ人部隊による虐殺の証言/ユダヤ人との共存の記憶

第2章 難民キャンプの始まり
 国境が開いていた三年間/「パレスチナ奪回」のためのキャンプ/レバノン政府からの圧力/アラブ大敗の衝撃/秘密活動への参加と弾圧

第3章 パレスチナ革命
 解放闘争の伝説「カラメの戦い」/学校をやめて軍事キャンプへ/ミュンヘン五輪襲撃事件/栄光のサッカー・クラブ/イスラエルによる報復作戦/アラファトの国連演説

第4章 消えた二つの難民キャンプ
 高校受験前の空爆/レバノン内戦の勃発/狙撃恐れ,命がけの水汲み/シリア軍からの離脱/タルザアタル陥落の日

第5章 サブラ・シャティーラの虐殺
 戻らなかった「平和の使者」/夜明けとともに来た殺戮/一歳半の女児も犠牲に/夫と息子を探してさまよう

第6章 キャンプ戦争と民衆
 「家を八回破壊された」/地下トンネルで移動/一〇〇人の戦士で防衛/宗教者と医師の役割/食料も尽きた六カ月間の包囲/キャンプに残った女性や子供たち

第7章 内戦終結と平和の中の苦難
 平和から除外された難民たち/シリアでの七年間の拘束/イスラエルでの二年間の拘束/自治政府行きを辞退/「何のために戦ったのか」――元戦士たちの声/広範にわたる就職差別

第8章 シリア内戦と海を渡る若者たち
 シリア内戦を逃れて/毒ガスミサイルの被害/内戦に巻き込まれた難民キャンプ/欧州への密航を繰り返す若者/トルコから密航船で海を渡る/ドイツへの密航と,失意の帰還
第9章 若者たちの絶望と模索
 家族間の抗争で三人死亡/政治的デモへの参加と薬物依存/「男は現実から逃避する」/一三歳で薬物依存の道に/親と子供の世代の断絶

終わりに――パレスチナ人の記憶をつむぐ
 人間のつながりが残る社会/女性たちが家族と社会を支える/パレスチナへの帰還の時を待つ/難民の経験を芸術の力へ


参考文献
あとがき

著者略歴

著:川上 泰徳
川上泰徳(かわかみ やすのり)
ジャーナリスト.1956年長崎県生まれ.大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)アラビア語科卒.1981年朝日新聞社入社.学芸部を経て,特派員として中東アフリカ総局員(カイロ),エルサレム,バグダッド,中東アフリカ総局長を務める.編集委員兼論説委員などを経て2015年退社.エジプト・アレクサンドリアに取材拠点を置き1年の半分を中東で過ごす.中東報道で,2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞.著書に『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社),『現地発エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット),『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店),『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版),『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など.

ISBN:9784000613385
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:296ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2019年04月
発売日:2019年04月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS