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東住吉冤罪事件

虚偽自白の心理学

著:村山 満明

紙版

内容紹介

それは殺人事件ではなく、事故だった――。1995年に大阪で起こった東住吉事件では、当初放火殺人犯とされた2人が「自白」に追い込まれ、有罪判決が下されたものの、2016年に再審で無罪が確定した。無実の人が虚偽自白に陥る過程をたどり、心理学の手法で自白の信用性を分析する。新たな冤罪を防ぐための心理学からの問い。

目次

プロローグ


第Ⅰ部 事件の経過

第1章 一九九五年七月二二日
 1 この日何が起こったのか
 2 火災発生時の状況
 3 めぐみさんの死

第2章 二人が逮捕されるまで
 1 火災直後の事情聴取と現場検証
 2 めぐみさんの死因と保険金請求手続
 3 放火殺人事件報道とその後の生活
 4 捜査の進展
 5 九月一〇日,任意同行と逮捕

第3章 虚偽自白に陥るまで
 1 二人が自白するまでの経過
 2 その後の青木さんの供述経過
 3 その後の宋さんの供述経過


第Ⅱ部 裁判の経過

第4章 検察側の犯行ストーリーと裁判の争点
 1 検察側が描いた犯行ストーリー
 2 主な争点

第5章 裁判所はどう判断したのか
 1 一審(原審)
 2 控訴審
 3 上告審

第6章 再現実験,再審決定から再審無罪へ
 1 再現実験
 2 再審請求・再審確定,釈放へ
 3 再審と無罪判決


第Ⅲ部 東住吉事件の心理学的検討

第7章 心理学はどこに注目するのか――要点と分析手法
 1 無実の者が虚偽自白に陥る可能性
 2 虚偽自白,自白の維持,否認
 3 供述を心理学的に分析する

第8章 宋さんの供述はどのようにして生まれたのか
 1 宋さんの供述の変遷
 2 宋さんの供述で注目される点
 3 宋さんが語る自白した理由
 4 逆行的構成
 5 宋さんの供述が意味すること

第9章 青木さんの供述はどのようにして生まれたのか
 1 青木さんの供述の変遷
 2 青木さんが語る自白した理由等
 3 青木さんは火災の原因をどう話していたか
 4 青木さんの供述が意味すること

第10章 宋さんと青木さんが虚偽自白に陥った心理
 1 宋さんの場合
 2 青木さんの場合

第11章 目撃証人,洵君と河内さんは何を語っていたのか
 1 洵君の供述
 2 河内さんの供述


第Ⅳ部 裁判官はなぜ判断を誤ったのか

第12章 判断を誤った理由
 1 有罪判決と無罪判決の比較
 2 有罪判決が判断を誤った理由

第13章 東住吉冤罪事件から学ぶ
 1 自白の信用性判断
 2 虚偽自白の心理
 3 心理学的な供述分析の役割


エピローグ

著者略歴

著:村山 満明
村山満明(むらやま みつあき)
1959年生.大阪経済大学人間科学部教授.臨床心理士.広島大学大学院教育学研究科博士課程前期(教育心理学専攻)修了.広島県立保育専門学校教諭,県立広島女子大学生活科学部助教授,同大学保健福祉学部助教授などを経て現職.専攻は臨床心理学,法心理学.著作に『尼崎事件支配・服従の心理分析』(共編著.現代人文社,2015年),「供述の信用性判断と供述者の心理特性」(『供述をめぐる問題 刑事司法を考える 第1巻』岩波書店,2017年)などがある.

ISBN:9784000245340
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:368ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2019年01月
発売日:2019年01月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNF