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中国名詩集

著:井波 律子

紙版

目次

 まえがき

■第一章 春夏秋冬

 春
  千里 鶯啼いて 緑 紅に映ず   杜牧
 立春
  春 人間に到らば 草木知る   張
 清明
  清明の時節 雨紛紛   杜牧
 晩春一
  未だ暁鐘に到らずんば 猶お是れ春   賈島
 晩春二
  争って流水に随いて桃花を趁う   晁冲之
 夏
  緑陰 幽草 花時に勝る   王安石
 大暑
  耳に満つ潺湲 面に満つ涼   白居易
 秋
  晴空 一鶴 雲を排して上る   劉禹錫
 立秋
  満階の梧葉 月明の中   劉翰
 白露
  白露 衣裳を湿す   白居易
 冬
  寒気 偏えに我が一家に帰す   林古度
 冬至
  又た見る 初陽の灰を動かすを   楊万里

■第二章 自然をうたう

 月
  牀前 月光を看る   李白
 星
  車を駆りて自ら唱う 行行行   黄遵憲
 夕陽一
  夕陽 無限に好し   李商隠
 夕陽二
  猶お落日の秋声を泛ぶるに陪す   高蟾
 霧
  香霧 雲鬟湿う   杜甫
 靄
  濃春の煙景 残秋に似たり   王士禛
 雨
  細雨 驢に騎って 剣門に入る   陸游
 雪
  独り寒江の雪に釣る   柳宗元
 氷
  稚子 金盆より暁氷を脱す   楊万里
 雷
  待ち得たり 春雷 蟄を驚かし起すを   鑄
 観潮
  久しく滄波と共に白頭   蘇軾
 風波
  濤は連山の雪を噴き来たるに似たり   李白

■第三章 季節の暮らし

 灯節
  六つの街の灯火に児童鬧ぐ   元好問
 上巳
  興懐 限り無し 蘭亭の感   鼎孳
 七夕
  銀漢 秋期 万古同じ   白居易
 中秋
  酒は銀河波底の月を入る   楊万里
 重陽
  独り異郷に在って異客と為る   王維
 除夜
  霜鬢 明朝 又た一年   高適
 朝寝
  日高く睡り足れるも 猶お起くるに慵し   白居易
 昼寝
  午枕 花前 簟流れんと欲す   王安石
 納涼
  杖を携え来たりて 柳外の涼しきを追う   秦観
 都市
  市声も亦た関情の処有り   陳起
 農村
  満窓の晴日 蚕の生まるるを看る   范成大
 祭り一
  桑柘 影斜めにして 秋社 散ず   王駕
 祭り二
  東塗西抹 粧を成さず   陸游

■第四章 身体の哀歓

 髪一
  白髪 三千丈   李白
 髪二
  行年未だ老いざるに 髪先んじて衰う   白居易
 目一
  花を看るに 猶自 未だ分明ならず   張籍
 目二
  白昼 霧に逢えるが若し   梅堯臣
 耳
  耳と謀る   范成大
 歯
  文を論じ法を説くに 卿に頼りて宣ぶ   自珍
 飩
  嚥みし後 方に知る 滋味の長きを   楊静亭
 酒一
  一杯 一杯 復た一杯   李白
 酒二
  児女は糟を餔らい 父はを啜る   屈大均
 茶
  誰か茶香を助すを解さん   皎然
 筍
  風吹けば 竹の香るに似たり   高啓

■第五章 家族の絆

 老母
  白髪 愁えて看 涙眼枯る   黄景仁
 姑
  幃幕を掲げ開くも 已に人無し   廖雲錦
 嫁
  未だ姑の食性を諳んぜず   王建
 夫一
  夫君 誼 最も深し   陳淑蘭
 夫二
  屡しば眠りを催さんと欲して 未だ応ぜざるを恐る   席佩蘭
 妻一
  猶お黔婁に嫁ぐに勝れり   白居易
 妻二
  喚び回す 四十三年の夢   陸游
 息子
  総べて紙筆を好まず   陶淵明
 娘一
  毎に憶う 門前 両りながら帰るを候つを   高啓
 娘二
  小女 鬚を挽き 争って事を問う   黄遵憲
 孫
  老妻 自らる 作婆の時を   趙翼
 兄弟
  湖山 応に夢みるべし 武林の春を   蘇軾
 姉妹
  同に竹馬に騎りて 卿の小さきを憐れむ   袁枚
 悼亡一
  如も美しく且つ賢なるは無し   梅堯臣
 悼亡二
  貞白 本より相い成す   商景蘭

■第六章 それぞれの人生

 友情一
  及ばず 汪倫が我れを送る情に   李白
 友情二
  両地 各おの無限の神を傷ましむ   元
 送別
  西のかた陽関を出づれば 故人無からん   王維
 邂逅
  落花の時節 又た君に逢う   杜甫
 春愁
  蜀魄来たらず 春 寂寞   寇準
 秋思一
  虫鳴 歳寒を催す   欧陽修
 秋思二
  旧は秋を悲しまず 只だ秋を愛す   楊万里
 旅愁
  何れの日か 是れ帰年ならん   杜甫
 隠棲
  悠然として南山を見る   陶淵明
 科挙
  五十年前 二十三   鈐義
 出仕
  悠悠 三十九年の非   王安石
 宿直
  宿鶯 猶お睡りて 余寒に怯ゆ   李建中
 左遷
  雪は藍関を擁して馬前まず   韓愈
 人生観
  只だ当に漂流して異郷に在るべし   唐寅

■第七章 生き物へのまなざし

 鶴
  紅蓼 風前 雪翅開く   韋荘
 燕
  茅簷の煙裏 語ること双双   杜牧
 雁
  高斎 雁の来たるを聞く   韋応物
 螢
  流螢 飛びて復た息う   謝
 猫
  塩を裹みて迎え得たり 小さき狸奴   陸游
 馬
  当に呂布の騎るを須つべし   李賀
 梅
  暗香 浮動 月 黄昏   林逋
 桃
  一樹の繁華 眼を奪いて紅し   李九齢
 梨
  月底 梨開き 万朶光く   徐渭
 柳一
  岸を夾む垂楊 三百里   杜牧
 柳二
  空しく憐れむ 板渚隋堤の水   王士禛
 菊
  百卉 凋零して 此の芳を見る   文徴明
 竹
  根を立つるは 原と破巌の中に在り   鄭板橋
 蓮
  翠蓋の佳人 水に臨んで立つ   杜衍
 海棠
  小蕾 深く蔵す 数点の紅   元好問
 牡丹
  花は応に老人の頭に上るを羞ずるなるべし   蘇軾

■第八章 なじみの道具たち

 笛
  誰が家の玉笛ぞ 暗に声を飛ばす   李白
 琴
  琴を弾じ 復た長嘯す   王維
 琵琶
  飲まんと欲すれば 琵琶 馬上に催す   王翰
 時計
  綢繆宛転し 時を報じて全し   康熙帝
 眼鏡一
  終に一層を隔つるを嫌う   袁枚
 眼鏡二
  敢えて君と同にせざらんや   袁枚
 鏡一
  照らし罷えて 重ねて惆悵   白居易
 鏡二
  清光 天に上らんと欲す   袁機
 炕
  雪は雕檐を圧するも 夢は成り易し   羅聘
 水車
  今年用いざるも 明年有り   趙翼

■第九章 文化の香り

 庭園一
  重ねて来たりて 倍ます情有り   商景蘭
 庭園二
  猶お汨羅の心を見るがごとし   施閏章
 楼閣一
  黄河 海に入りて流る   王之渙
 楼閣二
  山雨 来たらんと欲して 風 楼に満つ   許渾
 読書
  宜しく読むべく 宜しく倣うべからず   袁枚
 蔵書
  懐に放ちて一笑し 茗甌傾くるを得ん   葉昌熾
 著書
  満紙 荒唐の言   曹雪芹
 編纂
  百年の遺藁 天の留めて在り   元好問
 書
  千古 訟 紛紛たり   袁枚
 画一
  秋風 吹き上ぐ 漢臣の衣   袁凱
 画二
  画は無声に出づるも 亦た断腸   黄庭堅
 講釈
  君の 舌戦 酣なるを聴かん   袁宏道
 芝居
  直ちに関張と一様に伝わる   趙翼
 鞦韆
  空中にて手を撒てば 応に仙去すべし   張問陶
 球技
  堅円浄滑 一星 流る   魚玄機

■第十章 歴史彷徨

 刑天一
  刑天 干戚を舞わす   陶淵明
 刑天二
  左に干 右に戚もて 舞い休まず   袁枚
 西施
  石上の青苔 人を思殺す   楼穎
 軻
  乱山 終古 咸陽を刺す   袁枚
 項羽
  巻土重来 未だ知る可からず   杜牧
 諸葛亮
  長く英雄をして 涙 襟に満たしむ   杜甫
 王導
  只だ涙の新亭に灑ぐこと無きに縁る   汪元量
 六朝貴族
  烏衣巷口 夕陽斜めなり   劉禹錫
 柳敬亭
  人間に説与して 聴くに忍びず   毛奇齢
 西湖
  淡粧 濃抹 総べて相い宜し   蘇軾
 廬山
  疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと   李白
 赤壁
  銅雀 春深くして 二喬を鎖さん   杜牧
 洞庭湖
  白銀盤裏 一青螺   劉禹錫
 西域一
  春光 度らず 玉門関   王之渙
 西域二
  長河 落日円かなり   王維

■第十一章 英雄の歌

 凱旋
  大風 起りて 雲 飛揚す   漢の高祖
 栄華
  歓楽極まりて 哀情多し   漢の武帝
 慷慨
  志は千里に在り   曹操
 中国
  無数の英雄を引きて 競って腰を折らしむ   毛沢東

 あとがき
 時代別作者名一覧
 作者の生没年,字号,本籍地一覧
 索引

ISBN:9784000238687
出版社:岩波書店
判型:B6
ページ数:432ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2010年12月
発売日:2010年12月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DC