「軍都」を生きる
霞ヶ浦の生活史 1919―1968
著:清水 亮
内容紹介
物語は、日本で2番目に広い湖のほとりの村への海軍飛行場建設から始まる。地域の人々は、基地経済や外出してくる軍人と、日常的にどう関わっていたのか。戦後はなぜ自衛隊駐屯地を誘致したのか。戦争や開発、祝祭に揉まれて暮らしてきた地域住民の生活体験を、史料やインタビューから活き活きと描き出す。写真豊富。
目次
プロローグ この世界のもう一つの片隅で
序章 基地を抱きしめて
「魅力」という危険な問題
軍都の饒舌
戦後なお回帰する軍都
軍隊と地域をつなぐ結節点のドラマ
第1章 空に飛行機、地には下宿──戦間期の海軍航空隊は「世界の空の港」
航空隊は観光地
飛行機のスペクタクル
仮装行列とキング・コング
巨大格納庫にツェッペリン飛行船
「国際」的な「空の港」
墜落飛行士と農家の娘
開拓地買収への抵抗
農村生活の激変
軍人向け間貸し下宿
憧れは軍人の花嫁
コラム➊ 聞き書きに文字の声を聴く
第2章 盛り場は「ボイコット」、料亭で「芋掘り」── 暴力の諸形態
繁栄と底辺
婦女暴行からボイコット
殉職パイロット慰霊の花火大会
爆音の町の風情
水兵をヤクザがしばいて第二回ボイコット事件
在郷軍人が調停した第三回ボイコット事件
航空隊による水害救援
モテる「海軍さん」
料亭で「芋掘り」
「戦争が近づくとますますひどくなって」
コラム➋ さらにいくつもの芋掘り
第3章 「空都」の膨張と破裂──占領期は「学園都市」へ
「空の港」から「空都」へ
郷土の誇りは敵国の悪夢
「時局下」でも仮装行列
町制施行は海軍記念日
農地を失い下宿・クラブへ
予科練に憧れたクラブの子
外出の楽しみ
空襲の偏った被害
「空都」から「学園都市」と開拓地へ
銭湯とマー君
御用商人と梅干
コラム❸ 掩体壕で暮らした引揚げ開拓者一家
第4章 自衛隊にみた「軍都」復興の夢──空洞への誘致と高度経済成長期の埋没
警察予備隊誘致
「予備隊景気」への期待
空洞を満たす夢
醒めた記憶
「阿見は植民地」
新町に出てくる隊員たち
間貸し下宿の復活
広がらない基地反対運動
開拓地接収への抵抗
工場や住宅に埋もれていく基地
もはや「第一の戦後」ではない
コラム❹ 予科練跡地の少年自衛官
第5章 広報にみえる旧軍の面影──科学技術・祝祭・災害派遣
保安隊と軍艦マーチ
アメリカ式装備のパレード
自衛隊も仮装行列
兵器は子どもたちに人気
水害と戦う
「昔予科練今武器学校 ともに栄えて阿見の町」
予科練が結ぶ自衛隊・地域婦人会・戦友会
一九六八年の二つの世界
コラム❺ 軍都が生んだ歴史家
終章 軍事化の共演
“共存共演”
軍事化の魅惑
賛否よりもなじみ深さ
平凡は神話よりも強し
希望と憧れ
饒舌の輪のなかへ
エピローグ 記憶の器
注
略年表(一九一九ー一九六八)
図版出典一覧