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心の進化を語ろう

比較認知科学からの人間探究

著:松沢 哲郎

紙版

内容紹介

「人間とは何か」を理解するために心の進化を探ってきた研究者たちが,それぞれの視点から成果を語る.第1部では,編者が若き日を振り返りながら比較認知科学誕生への道のりをたどる.第2,3部では,雑誌『科学』の連載「ちびっこチンパンジーと仲間たち」と,霊長類学70年とアイ・プロジェクト40年を記念して企画された特集を収録.

目次

はじめに
執筆者一覧


1 心の進化を探る――方法序説
 比較認知科学への道のり……………松沢哲郎


2 ちびっこチンパンジーと仲間たち
 1 レオのリハビリテーション
 2 つられる視線――仲間の視線に敏感なチンパンジー
 3 死を弔う意識の芽生え?
 4 動物園でチンパンジーを観察しよう
 5 真夏のチンパンジー
 6 幸島探訪
 7 コンゴ盆地の野生ボノボ
 8 アジアの隣人――オランウータン
 9 アユムとアキラ
 10 「名前」の由来
 11 野外実験のおもしろさ
 12 オランウータンを森に帰す
 13 チンパンジーのすむ森をつなぐ緑の回廊――東屋方式の成功
 14 ふたごのちびっこチンパンジー
 15 世界に働きかける「わたし」
 16 ボルネオの森から
 17 見てまねる
 18 野生マウンテンゴリラの国から
 19 チンパンジー研究者から見たボノボ
 20 アウトグループという発想
 21 熊本サンクチュアリにようこそ
 22 チンパンジーにも「黄色い声」!?
 23 野生チンパンジーの出産
 24 数字の記憶と加齢変化
 25 同調する行動
 26 ちびっこオランウータン
 27 果実を分け合うボノボ
 28 30年ぶりの空――医学感染実験チンパンジーがゼロになった
 29 チンパンジー研究の新時代――WISH 大型ケージ熊本1号機の稼動
 30 植物園にすむクモザル
 31 ヒトの脳はいかにして巨大化したか――チンパンジー胎児の比較発達研究
 32 チンパンジーの誕生会
 33 類人猿にも「中年の危機」がある?
 34 ダナム・バレーにて
 35 「緑の回廊」の野火を消し止めた
 36 技を盗むチンパンジー
 37 リズムに合わせて――キーボードをもちいたチンパンジーの同調行動実験
 38 チンパンジーの視点から世界を見る
 39 我が家のちびっことチンパンジー
 40 まばたきはコミュニケーション
 41 WISH 大型ケージ――チンパンジー研究のパラダイムシフト
 42 雲南省無量山のクロカンムリテナガザル
 43 チンパンジーの子どもとゴリラの子ども
 44 霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院
 45 チンパンジーの毛からストレスをはかる
 46 隙間から見た世界
 47 イルカから見た世界,チンパンジーから見た世界
 48 日本初のボノボ研究
 49 雲南のキンシコウ
 50 ボッソウのチンパンジー――密猟とエボラ出血熱
 51 ものの順序と空間のふしぎな関係
 52 公益財団法人日本モンキーセンター――「自然への窓」としての動物園
 53 ボノボの社会と認知研究
 54 レイコありがとう
 55 チンパンジーがチンパンジーを殺す――152例の報告から
 56 ふたごのチンパンジーを育てる母親たち
 57 人間と類人猿の子育ち・子育てについて考える
 58 絵に映し出される心
 59 ウガンダとカンボジア――霊長類を広く見て,人間を深く知る
 60 アユムたちの数の勉強――0 から19 までと基数の学習
 61 勉強するゴリラの子,勉強しないチンパンジーの子
 62 チンパンジーに学ぶヒトの笑顔の意味
 63 戦争と協力
 64 カメラトラップ――チンパンジーを見守る“目”
 65 音楽の起源
 66 ボノボとチンパンジーのアイ・コンタクト
 67 データベースから考える,チンパンジーの幸せな暮らし
 68 フクロテナガザルの人工哺育児を親元に戻す
 69 母親による子育て
 70 ウマの目からの眺め
 71 カメルーンからギニアへ――狩猟採集民と野生チンパンジーの暮らしの比較
 72 霊長類学からポルトガルの野生ウマ研究へ
 73 「緑の回廊」がつなぐ森と人
 74 サバンナ混交林にすむボノボ
 75 アマゾンの新世界ザル
 76 チンパンジー・レオの10年
 77 チンパンジーの核家族の子育て――最初の2年間の記録
 78 ニホンザルの赤ちゃんの自発的微笑
 79 なぜリズムが「合う」のか?――ヒトとチンパンジーの比較から
 80 日本モンキーセンター創立60周年
 81 他者の心を読む類人猿
 82 ニイニは見習いベッド職人
 83 チンパンジーとヒトのじゃんけんの学習
 84 京都市動物園のチンパンジー・ゴリラ・マンドリル――毛づくろい,移動,出産前後の群れの行動
 85 チンパンジーのダウン症
 86 障害があるチンパンジーの福祉を考える
 87 プチの最期――チンパンジーの脳死
 88 霊長類研究所50周年――過去,現在,そして未来
 89 野生ウマの社会――霊長類との比較から
 90 ドローンを活用して“チンパンジーの森” を復元する
 91 チンパンジーは,平均の大きさがわかるか?
 92 チンパンジーが協力して課題解決――2人で数字を順番に答える
 93 ジェーン・グドールのコスモス国際賞受賞
 94 チンパンジー親子トリオのゲノム解析
 95 霊長類学者,宇宙と出会う
 96 推定年齢58歳で亡くなった野生チンパンジー・ベルの生涯
 97 チンパンジーの毛からストレスをはかる――社会関係が大事
 98 温泉に入るサルやカモシカ
 99 探検大学の誕生――ヒマラヤ初登頂,アフリカ初探検,南極初越冬の60周年
 100 ちびっこチンパンジーたちの18年


3 分かちあう心の進化――比較認知科学から見た人間
 1 人間を知る――霊長類学からワイルドライフサイエンスへ
 2 野生の認知科学をめざして
 3 先端テクノロジーでチンパンジーの心に迫る
 4 チンパンジー・ボノボから見る戦争と協力の進化
 5 大型類人猿における物にかかわる知性の発達
 6 映画監督,模型職人,大工に加えて研究者
 7 スローロリスから見た世界
 8 樹の上で進化した味覚――北半球の霊長類,南半球のコアラ
 9 ウマと人間
 10 他者をおもいやる心の進化
 11 顔の温度で調べるチンパンジーの感情
 12 社会性と音楽の進化
 13 チンパンジーから見た質感の世界
 14 インドネシアのワウワウテナガザルをたずねて
 15 森を再生する試みから見た人間とチンパンジー


出典一覧

著者略歴

著:松沢 哲郎
松沢哲郎(まつざわ てつろう)
1950年愛媛県松山市生まれ.1974年京都大学文学部哲学科卒業,理学博士.1977年11月から「アイ・プロジェクト」とよばれるチンパンジーの心の研究を始め,野生チンパンジーの生態調査も行う.チンパンジーの研究を通じて人間の心や行動の進化的起源を探り,「比較認知科学」とよばれる新しい研究領域を開拓した.2016年3月に京都大学霊長類研究所を退職,同年4月京都大学高等研究院副院長・特別教授に就任.現在,霊長類研究所兼任教授,中部大学創発学術院特別招聘教授,日本モンキーセンター所長などを兼任している.
著書に『想像するちから』(岩波書店,第65回毎日出版文化賞,科学ジャーナリスト賞2011),『分かちあう心の進化』(岩波書店)など多数.2004年紫綬褒章,2013年文化功労者.

ISBN:9784000063364
出版社:岩波書店
判型:B5
ページ数:278ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2019年12月
発売日:2019年12月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PSVM