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KS化学専門書

ゲルの科学

著:長田 義仁
著:K・デュセック
著:柴山 充弘

電子版

内容紹介

高分子ゲル(以下,単に「ゲル」)は不溶性の高分子網目(ネットワーク)と溶媒とからなる二成分系で,しかもその高分子網目は不均一な三次元構造をもつという特異な物質系です。ゲルは,現代においても未解明の部分が多い一方で,大きな可能性を秘めています。本書はゲルについて,その生成機構,構造,熱力学的性質,粘弾性的性質(レオロジー),材料科学的性質をふまえつつ,総合的・統合的にゲルという物質の本性まで迫って解説し,論述した専門書です。
本書は全9章構成です。
「第1章 高分子ゲルとは」では,そもそもゲルとは何なのか,ゲルの定義とゲル科学の歴史・分類,そしてゲル研究の重要性について解説しています。
「第2章 ゲルの基本的性質」では,ゲルの一般的な性質と特性について解説しています。
「第3章 ゲルの形成」では,ゲルの詳細な分類,一般的な高分子網目の形成法と不均一性,および分岐形成の理論について解説しています。
「第4章 ゲルの熱力学」では,基本となる膨潤理論と熱力学,理論モデルの発展,体積相転移の理論について,詳細に解説しています。
「第5章 膨潤と収縮の速度論」では,溶媒の拡散と網目の拡大に基づく膨潤の速度論およびさまざまな形態のゲルについて解説しています。
「第6章 ゲルの力学とレオロジー」では,ゲルの変形と力学応答,ゾル-ゲル転移について,実験結果を踏まえ理論的に解説しています。
「第7章 ゲルの構造解析」では,光および中性子散乱による構造解析を主とする理論と実験について解説しています。
「第8章 生物におけるゲル」では,生物におけるゲルを生物組織の階層性に沿って解説しています。
「第9章 ゲルの生物模倣機能と応用」では,合成ゲルが目指す生物機能と応用についての成果と動向について解説しています。

ゲルは生物を構成する主要な物質でもあります。生物組織をゲルの立場から理解することは,将来のゲル科学の重要な課題の一つであり,ゲル科学は将来,医学・薬学分野へ大きな貢献をしていくことが予想されます。そのような観点から,本書では生物に関する第8章,第9章を設けました。

ゲル科学の奥深さが味わえる超大作です。すでにゲル研究をしている学生・研究者だけでなく,これからゲル研究を始めようと考えている方にもお薦めの1冊です。ぜひ座右の書としてください。

目次

第1章 ゲルとは―ゲルは普遍的な物質の状態である 1.1 高分子ゲルとは 1.2 生物組織はハイドロゲルでできている 1.3 日常生活におけるゲル 1.4 ゲルの歴史と定義 1.5 高分子ゲルの分類 1.6 なぜゲル科学が重要なのか 付録 IUPACによるゲルの定義 第2章 ゲルの基本的性質 2.1 ゲル化点 2.2 ゴム弾性 2.3 液体の吸収と保持 2.4 膨潤および体積相転移 2.5 高分子電解質ゲル 2.6 ゲル中の水 2.7 ゲル中の拡散および輸送 第3章 ゲルの形成 3.1 架橋(橋架け)反応とは 3.2 化学ゲル 3.3 物理ゲル 3.4 網目構築の理論モデル 第4章 ゲルの熱力学 4.1 膨潤現象とは 4.2 膨潤度の決定および表式 4.3 膨潤に関する理論的アプローチ:非荷電ゲルの平衡膨潤 4.4 荷電を有するゲルの膨潤 4.5 準希薄系:排除体積とスケーリング理論 4.6 拘束下における膨潤 4.7 ゲル中の相分離およびゲル形成中の相分離:体積相転移 4.8 まとめ 第5章 膨潤と収縮の速度論 5.1 ゲル膨潤の現象論 5.2 高分子網目の協同拡散理論 5.3 膨潤と収縮 5.4 膨潤・収縮の速度論に対する実験的証明 5.5 体積相転移温度前後における膨潤と収縮 5.6 まとめ 付録A テンソル 付録B ベッセル関数 付録C 式の導出 第6章 ゲルの力学とレオロジー 6.1 ゲルの弾性 6.2 ゲルの拡散-力学カップリング 6.3 ゾル-ゲル転移のレオロジー 第7章 ゲルの構造解析 7.1 構造解析の方法とゲルの不均一性 7.2 散乱理論 7.3 種々の実験条件におけるゲルの散乱関数 7.4 顕微鏡法 7.5 NMR法 7.6 動的光散乱法 第8章 生物におけるゲル 8.1 ヒトの身体はゲルでできている 8.2 細胞外マトリックス(ECM) 8.3 結合組織 8.4 細胞 8.5 細胞核 8.6 細胞骨格 第9章 ゲルの生物模倣機能と応用 9.1 高強度ゲル 9.2 低摩擦ゲル 9.3 ソフト・ウェットアクチュエーター 9.4 細胞(培養)担体 9.5 階層性細胞骨格ゲル 9.6 ドラッグデリバリーシステム(DDS) 9.7 バイオメディカルゲル

JP-eコード:06A0000000000228985F
出版社:講談社
コンテンツ公開日:2020年07月03日