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世界の果ての魔女学校

著:石崎 洋司
絵:平澤 朋子

電子版

内容紹介

なにもかもうまくいかず、家出したアン。恋人の過去の姿がありありと目に浮かび、苦しむ少女、ジゼル。古書店で夏のアルバイトをしながら、「彼」を待つアリーシア。村のつまはじき者で、復讐のときをうかがうシボーン。世界の果てにある魔女学校は、どこにでもいそうな、そんな少女たちを狙っている。人間を呪う、りっぱな魔女にするために--。

目次

◆アンの物語◆ <けれども、あたしは二つめの角を左に曲がってしまったのでした。  あたしは、いつもそんな調子でしたけど。  街いちばんのあわてもので、なにをさせても中途半端。それで、親といい、先生といい、友だちといい、まわりの人をみんな、いらだたせてばかりの娘だったんです。  でも、あのときばかりは、あたしのせいだけとはいえなかったと思います。そもそも、カテドラルの方へいくのは、初めてだったし、そのうえ、とんでもなく暗かったんです。あたしじゃなくたって、まちがえる子は、きっといたはずです。> ◆ジゼルの物語◆ <「それは、嫉妬ですね。」  黒い羅紗布をかけた丸テーブルの向こうから、そう言われたとき、驚いたのとがっかりしたのとで、あたしは息が止まりそうになりました。  この人、あたしの相談を、若い女の子によくある恋の悩み、ぐらいにしか思ってない……。  そんなのとは、ぜんぜんちがうの。頭がおかしくなりそうなほど苦しいのよ。>  ◆アリーシアの物語◆ <わたしが古書店の店番をしながら、読書に没頭していたときです。突然、男の人の声が降ってきました。 「これはいくらですか?」  こうして書いてみると、あたりまえのせりふですが、そのときのわたしには、天使が空から舞い降りてきたように思えました。> ◆シボーンの物語◆ <「ねえ、どうしてだれもしゃべらないの?」  うすぐらい教室に、大きな声がこだましました。声をあげたのは、前から三列め、右から三番め。名前はリズ。昨日の午後、ここへ来たばかりの、十三歳の女の子です。 「ねえ、どうして?」  わたしが座っているのは、教室の最前列のまん中。  でも、ふりかえらなくても、ぶあついくちびるがパクパク動いて、それにあわせて、鼻の両がわにちらばった小麦色のそばかすがふるえるのが、目に浮かびます。 「そういう規則だからよ。従いなさい。すぐに慣れるわ。」>

JP-eコード:06A0000000000076662L
出版社:講談社
コンテンツ公開日:2018年11月16日