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叫びの都市

寄せ場、釜ヶ崎、流動的下層労働者

著:原口 剛

紙版

内容紹介

 夜の底、うねり流れる群れ ――― 
 流動する労働者(流動的下層労働者)たちは、かつて、職や生存を求め、群れとなった。かれらは、都市空間の深みを潜り抜けたのだ。山谷‐寿町‐笹島‐釜ヶ崎を行き交う、身体の群れ。その流動は、いかなる空間を生み出していったのか。
 私たちはすでに「釜ヶ崎的状況」を生きている。「寄せ場〔よせば〕」の記憶は、今を生き残る術〔すべ〕を手繰りよせるための、切実な手がかりなのだ。地表を横断する群れとなれ、君みずからの「寄せ場」をつくれ ―― 過去からの声は、そう私たちに耳打ちしている。

目次

序 章
● アスファルトを引き剥がす
   釜ヶ崎という場所
   過程としての空間
   本書の問い ―― 線を追跡する
第1章
● 戦後寄せ場の原点 ―― 大阪港と釜ヶ崎
   一九五〇‐六〇年代の港湾労働の地理
   港湾における労働者階級の状態
   国策と資本の矛盾
   封じ込められた例外
第2章 
● 空間の生産
   一九六〇年・釜ヶ崎の社会空間
   場所の構築 ―― 焦点とフレーム
   空間改造
   植民地的空間の犠牲者たち
第3章
● 陸の暴動、海のストライキ
   対抗の地勢
   陸から海への線
   海から陸への線
   失われた地勢
   記憶のリストラクチャリング
   孤島から群島へ ―― 流動的下層労働者の像 
第4章
● 寄せ場の生成 (1) ―― 拠点性をめぐって
   暴動とは何であったのか
   暴動の活用 (1) ―― 全港湾西成分会の議会内闘争
   階級の形成 ―― 流動的下層労働者
   暴動の活用 (2) ―― 釜共闘の直接行動
   拠点としての寄せ場
第5章
● 寄せ場の生成 (2) ―― 流動性をめぐって
   寄せ場の労働者になる ――I氏の流動
   寄せ場とはどこか
   複数の寄せ場
   飛び火する運動 ―― 「山谷‐釜ヶ崎」
   あらたに飛び火する運動 ―― 寿町
   さらに飛び火する運動 ―― 笹島
   寄せ場とはなにか ―― 流動と過剰
終 章
● 地下の都市、地表の都市
   社会の総寄せ場化
   寄り場なき都市空間
   私営化とジェントリフィケーション
   寄り場のゆくえ
 
● あとがき/文献一覧/索 引

著者略歴

著:原口 剛
原口 剛 Haraguchi Takeshi
1976年、千葉県に生まれ、鹿児島県で育つ。東京大学文学部にて倫理学を学んだのち、2000年より大阪市立大学文学研究科にて地理学を学ぶ。2007年、大阪市立大学文学研究科後期博士課程修了、博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)や大阪市立大学都市研究プラザ研究員などを経て、2012年より神戸大学大学院人文学研究科准教授。
専門は都市社会地理学および都市論。
共編著に、『釜ヶ崎のススメ』(洛北出版 2011)など。
訳書に、ニール・スミス『ジェントリフィケーションと報復都市 新たなる都市のフロンティア』(ミネルヴァ書房 2014)。
共著に、Marxism and Urban Culture(Lexington Books 2014)、『労働再審4 周縁労働力の移動と再編』(大月書店 2011)、『ホームレス・スタディーズ 排除と包摂のリアリティ』(ミネルヴァ書房 2010)、『地域調査ことはじめ あるく・みる・かく』(ナカニシヤ出版 2007)、『都市空間の地理学』(ミネルヴァ書房 2006)…

ISBN:9784903127255
出版社:洛北出版
判型:4-6
ページ数:410ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2016年08月
発売日:2016年08月31日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF