原発被ばく労災
拡がる健康被害と労災補償
著:被ばく労働を考えるネットワーク
内容紹介
福島第一原発では見通しの立たない収束作業が続けられており、被ばく労働問題は深刻です。不足する労働者は全国各地から集められていますが、安全対策も不十分なままです。
とりわけ、非正規・下請け労働者の権利は守られていません。雇用関係や安全管理の曖昧な重層的下請構造は放置されたままです。下請け企業による被ばく線量隠しの実態も明らかになりました。事業者である東京電力、対策に当たっている政府に任せきりでは、労働者の安全と命を守ることができません。
被ばく労働者と市民、労働者同士が広範につながり、労働者の権利の回復と原発の根絶に向けた取組みを進めるために、本書を活用してください。
目次
第1 章 原発労働者は語る
収束作業に従事した人を使い捨てにする東電に怒り あらかぶさん
予想外作業も多かった玄海原発の定期点検作業 岩田守さん、あらかぶさん
同じ会社の人が労災死亡事故に。ベテランの人がなぜ? 池田実さん
第2 章 労災補償、原子力損害賠償とは
1 労災補償のしくみと放射線障害
2 労災請求をしよう…
3 原子力災害賠償制度と被ばく労働
第3 章 被ばく労災補償をめぐる闘いの記録
最初の原発被ばく裁判が明らかにした因果関係立証の難しさ 岩佐嘉寿幸さん(放射線皮膚炎)
「原発労働で死んだ人はいない」という嘘を暴くために… 嶋橋伸之さん(慢性骨髄性白血病)
●実名で労災申請した最初のケース
現場労働者の「おかしい」という直感から闘いは始まった 長尾光明さん(多発性骨髄腫)
放射能漏れ検査の仕事は、下請労働者に大量被ばくを強いた 喜友名正さん(悪性リンパ腫)
計器類の〝預け〟の実態や急性被ばく症状に目を背ける判決 梅田隆亮さん(急性心筋梗塞)
あらかぶさん裁判が問いかけるもの あらかぶさん(白血病)
第4 章 原発労働者の健康と安全の確保に向けて
原発労働者・放射線業務従事者を健康管理手帳の発行対象に
すべての収束・廃炉作業労働者に無料の健康診断を
特例緊急被ばく限度250ミリシーベルトの撤廃
国による被ばく線量の一元管理と電力事業者の被ばく防護責任
被ばく線量の上限や取り扱いの安全サイドへの変更
労災認定対象疾病の拡大と基準の変更
原賠法の改正による労働者の救済を
工程優先ではなく安全優先のロードマップ・作業スケジュールに
総合的な工程管理と現場における被ばく防護対策の徹底
違法業者の取り締まり強化と重層下請構造の撤廃
巻末資料